【NPJ通信・連載記事】読切記事
名護市長訪米行動を振り返る (下)
ワシントンへの訴えは継続的に行う必要がある。議員は入れ替わり、もともと関心がない人々も少なくないため、すぐ忘れられてしまう。沖縄の国会議員や首長の訪米は、象徴として大きな意味を持つが、1度の訪米では面談数にも議論の深まりにも限界があるため、ワシントンに根差した継続的働き掛けが必要である。議会の動向や米国の政策の変化について関連事項をあぶりだしながら、その時々に働きかけ方を判断する必要がある。法案や予算の詳細な検討も必要であろう。
メディアなどでは面談した相手の地位が注目されるが、働き掛けるべき相手は多い。議会に限っても、軍事・歳出・外交の各委員会のメンバーもさることながら、所属委員会にかかわらず環境や人権の視点から共闘できる議員の存在が重要になる。
今回の訪米では、議会戦略を冷静に練る視点が手薄になってしまったことは反省点だ。補佐官レベルも含めて興味関心の合う相手をみつけ共に活動する必要がある。
また、相手と同じ「言語」で話す必要がある。ワシントンでは軍事戦略的視点で議論が展開し、ヒューマンストーリーや具体的戦略を伴わない平和指向は軽視される傾向にある。海兵隊の沖縄駐留が抑止力維持の観点から必要かという議論は避けて通れない。
他方、米国の歴史が人々の喜びや悲しみで動いてきたことも忘れてはならない。思いに共感した一般の人々が協力してくれることも多い。場を見定め、言葉を選ばねばならない。
そして、何よりも、沖縄の声を真に代弁する人がワシントンに常駐し、人間関係をつくりながら適切な働き掛けを継続的に行う必要がある。
なお、多くの米国人が、日本政府さえ「辺野古案は駄目だ。」と主張すれば米国は受け入れる、と話す。ジョーンズ元大佐が「日本政府が変わらねばならない」と言ったように、日本国内の対策は当然ながらより重要である。
しかし、それを前提にしながらも、ワシントンからの影響力を得ながら日本政府の政策に変化を与えることは有用だろう。集団的自衛権行使の問題でも、多くの政治家がワシントンに渡り、米「知日派」からお墨付きを得ようと躍起になっている。それは日本で大きく報道され日本政府の政策に影響を与える。彼らばかりにワシントンの「拡声器効果」を利用させてはならない。(6月7日付沖縄タイムス掲載)
さるた・さよ (弁護士、新外交イニシアティブ事務局長)
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