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問題の核心は教育の時代逆行

寄稿:飯室 勝彦

2017年4月6日

 大阪の学校法人「森友学園」問題の責任追及は迷走気味だ。国有地の安値売却、小学校設置の条件付き認可をめぐっては政府・財務省と大阪府が「鶏が先か卵が先か」のような論争で責任を押し付け合っている。百万円の寄付については「確かにもらった」と国会で証言した籠池泰典氏(問題発覚後に法人理事長を辞任)と、寄付を否定する安倍晋三首相夫妻、政府与党側の双方が「自分たちの言うことが真実」と主張して互いに譲らない。

 野党側は「私や妻が(森友学園への国有地売却に)関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」という首相発言(2017年2月17日、衆院予算委)に勢いづいたが決め手となる追及材料がなく攻めあぐんでいる。対する政権側は籠池氏を悪者にすることで事態を収拾しようとしているように見える。
 
そんななかで作家の中島京子氏が毎日新聞紙上のコラム「時代の風」で鋭い指摘をしている。その結びはこうである。
 「私たちが(中略)さまつなことにとらわれているうちに、気がつくと日本国中が森友学園みたいな学校だらけになっているのではないかと想像して、私は怖い。森友問題が重要なのは、その危険を私たちに教える事件だったからなのだ。」(4月2日毎日新聞朝刊=東京版)

 国有地の異常な安値売却、補助金の不正取得、首相寄付の真偽、稲田朋美防衛相と学園との関係など解明しなければならない点は多いが、問題の核心は戦前教育への逆戻りの動きである。
それは法人が運営する幼稚園の園児たちに教育勅語を暗誦させている動画に象徴されている。
明治天皇が当時「臣民」とされていた国民に守るべき徳目を示し、「万一危急の大事態が起こったなら……一身を捧げて皇室国家のためにつくせ」(戦前の文部省訳)と説いたのがこの勅語だ。国民主権、平等権をはじめとする基本的人権の尊重、平和主義などを基調とする現憲法とは真っ向から対立する。だからこそ戦後の国会で排除、失効確認の決議がされたのである。

問題を単なるスキャンダルととらえると本質を見誤る。時代に逆行し、憲法を否定するかのような教育実現を目指す人物と、その人物が中心となった学校法人が引き起こした問題なのである。
森友学園の小学校設置の動きをめぐって生起したさまざまな事象をそうした観点で分析すれば、それらは時代錯誤の逆行教育の後押しになったことが分かる。
これはまさに憲法問題であり、国有地売却疑惑に矮小化してはならない。
 
 籠池氏は、改憲を主張し、天皇を中心とした戦前の日本社会をよしとする復古調の政治運動を展開する組織「日本会議」の有力メンバーだった。園児に教育勅語を暗誦させることは運動の幼児教育における実践の一つだったといっていいだろう。
記者会見などで籠池氏は「国を愛する人材を育てる」などと、新設予定の小学校でも教育方針を踏襲することを公言していた。
 その計画が実現の一歩手前まで至ったのはさまざまな“後押し”があったからだ。

 大阪府による小学校設置認可の基準緩和、国有地の安値売却、条件付き設置認可など異例、不自然づくめで、どちらが条件でどちらが結果かわからないほど入り組んでいるが、いずれも新しい小学校の実現を可能にする方向へ向かっていた。

 “後押し”の背景にちらつくのが政治の影である。
 安倍首相の夫人、昭恵氏は森友学園の幼稚園で講演してその教育を高く評価し、新設する小学校の名誉校長になることを承諾した。首相個人も政府も昭恵夫人は私人だと主張しているが、公務員のサポートを受け「内閣総理大臣夫人」の肩書を表示しての活動が政治色を帯びないはずはない。

 籠池氏は「戦後レジームからの脱却」を唱える首相を信奉しており、小学校に首相の名を冠することまで計画した。幼稚園運動会の選手宣誓で園児に「安倍首相がんばれ」「安保法制国会通過よかったです」などと叫ばせたりもした。
 首相と直接は交流がなかったにしても、昭恵夫人との関係や夫人から聞いたという首相の森友学園教育への評価を、籠池氏が宣伝に利用したことは間違いあるまい。政治家が直接働きかけたかどうかはともかく、公務員など関係当事者が少なくとも政治家の意向を忖度したことは容易に推測できる。

 それに国会の証人喚問で籠池氏は「協力を頼んだ政治家の名前を次々挙げたが、日本会議の主張に同調する議員連盟には首相をはじめ現閣僚のほとんどが入っている。
 教育勅語についても自民党の国会議員には肯定する人が少なくない。稲田朋美防衛相のように「教育勅語の中の親孝行とかは良い面だと思う。どういう教育をするかは教育機関の自由でもある」(2月23日、衆院予算委)「教育勅語に流れている核の部分は取り戻すべきだ」(3月8日、参院予算委)と公的な場で擁護した現職閣僚もいる。
 内閣としても民進党議員の質問主意書に答える形で「教育勅語を教材として使用することまで否定されるべきではない」との閣議決定(3月31日)をした。

 教育基本法の改悪、道徳の教科化など安倍政治の流れを見ると、教育に関しても戦後改革の否定が進んでいる。
 今回はたまたま特異なキャラクターの暴走で頓挫したが、森友学園をめぐって浮上した諸事象は、教育勅語を復活させ、新憲法に基づく戦後教育を否定する深層潮流が日本社会に拡がっていることを物語るのではないか。
 冒頭に引用した中島京子さんの不安は決して杞憂ではない。

 勅語が求める親孝行や家族愛の大切さに目を奪われて本質を見誤ってはならない。天皇が「臣民」に強制し、皇室国家のために奉仕するよう指示したことが勅語の本質であり、国民をあの戦争に動員する精神的バックボーンの役割を果たした。

 過ちを繰り返さないために森友問題をきちんと解明し、核心を突き止めなければならない。メディアは深層潮流を徹底的に暴き警鐘を鳴らさなければならない。
 そして国民は情報を主体的に求め、自ら考え判断するべきだ。そのためにまず教育勅語の全文を熟読したい。

 飯室さんの本投稿にあるように、教育勅語がいったい何を国民に要求していたのか、原文にあたって検討する必要があると思います。また、最近稲田朋美防衛大臣、菅義偉官房長官の発言などで、教育勅語の良いところは学んだ方が良いとの発言も目立ちます。
 その意味で、批判的に資料を検証する目的で以下教育勅語原文と現代語訳を掲載します。
                                NPJ編集部

【原文】
敎育ニ關スル勅語
朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世々厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ敎育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ是ノ如キハ獨リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顯彰スルニ足ラン
斯ノ道ハ實ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其徳ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ
明治二十三年十月三十日
御名御璽
 

【現代語訳】
朕が思うに、我が御祖先の方々が国をお肇めになったことは極めて広遠であり、徳をお立てになったことは極めて深く厚くあらせられ、又、我が臣民はよく忠にはげみよく孝をつくし、国中のすべての者が皆心を一にして代々美風をつくりあげて来た。これは我が国柄の精髄であって、教育の基づくところもまた実にここにある。

汝臣民は、父母に孝行をつくし、兄弟姉妹仲よくし、夫婦互に睦び合い、朋友互に信義を以って交わり、へりくだって気随気儘の振舞いをせず、人々に対して慈愛を及すようにし、学問を修め業務を習って知識才能を養い、善良有為の人物となり、進んで公共の利益を広め世のためになる仕事をおこし、常に皇室典範並びに憲法を始め諸々の法令を尊重遵守し、万一危急の大事が起ったならば、大義に基づいて勇気をふるい一身を捧げて皇室国家の為につくせ。かくして神勅のまにまに天地と共に窮りなき宝祚(あまつひつぎ)の御栄をたすけ奉れ。かようにすることは、ただに朕に対して忠良な臣民であるばかりでなく、それがとりもなおさず、汝らの祖先ののこした美風をはっきりあらわすことになる。

ここに示した道は、実に我が御祖先のおのこしになった御訓であって、皇祖皇宗の子孫たる者及び臣民たる者が共々にしたがい守るべきところである。この道は古今を貫ぬいて永久に間違いがなく、又我が国はもとより外国でとり用いても正しい道である。朕は汝臣民と一緒にこの道を大切に守って、皆この道を体得実践することを切に望む。
(文部省図書局『聖訓ノ述義ニ関スル協議会報告書』1940年)

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