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【NPJ通信・連載記事】心の免疫・体の免疫/佐藤 義之

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第2話 近代西洋医学の盲点

2017年7月27日

 これから記載することは決して西洋医学を批判するものではなく、また東洋医学の方が優れているとお勧めするものではないことを重々ご承知おきいただきたいと思います。

 ものには皆、長所と短所、光と影があり、西洋医学には西洋医学の盲点があることを知っていただき、そのことによって皆様方の健康や病気に対しての認識を新たにしていただければと思います。

 近代西洋医学の盲点とは以下の2点です。

1)病気を診て人間を診ない傾向
  (人間を含めて診るより、病気そのものを診る傾向)
2)病気の原因を外に求める傾向
  (病気の原因は外にあって、例えば細菌やウイルスのように外から災いをもたらすものと見
  る傾向)

 皆様が医療機関にかかられて、治療が功を奏している時は、また症状が改善している時は、上記の盲点にあまり気付かれることはないでしょう。しかしなかなか症状が改善しなかったり、治療の効果が現れず、病気が進行し始めるととたんに上記の盲点が問題となってきます。

 私はたまたまヒメマツタケの研究と臨床応用が長いので、癌や自己免疫疾患(※1)の患者さんからの相談を多く受けて参りました。
 

1)を少し例をあげてご説明いたしましょう。

Aの例
 T大学病院にかかられている57才男性の方ですが、癌の発生源は大腸癌で、現在は肺と肝臓に転移があるそうです。この2年間に16回抗癌剤の点滴治療を受けたそうです。しかし、3か月毎に撮ったCTで毎回腫瘍は大きくなっていました。主治医は患者さんに17回目の抗癌剤の点滴治療を勧めました。さすがに患者さんは主治医に尋ねたそうです。「17回目の点滴で腫瘍は小さくなるでしょうか?」と。主治医はそれに対し「多分難しいでしょう。」と答えています。患者さんは更に質問を続けます。「それでは何故17回目の治療を勧めるのですか?」と。それに対し主治医は、「これしか方法がないからです。」と答えたそうです。もちろんその患者さんは17回目の抗癌剤治療は断ったそうです。

Bの例
 J大学病院にかかられている55才女性の方です。癌の発生源は子宮頚癌ですが、発見時には既に手術ができないほど癌が進行していました。抗癌剤治療でも癌は縮小せず、放射線療法が行われました。一応、癌の拡大は止まったようですが、毎日、血便が続くことになりました。放射線による腸管障害です。主治医は今後2年間、固形物を食べてはならないと指示してきたそうです。毎日の必要なカロリーは首の静脈から点滴で入れることになりました。患者さんがおっしゃったのは、「私はもともと子宮癌が手術が出来ないくらい進んでいました。あと2年生きているでしょうか?」また、こうもおっしゃいました。「毎日必要なカロリーは点滴で入れて下さっているのでしょうが、実はお腹を掻きむしりたくなる程お腹が空くのですが・・・。」

Cの例
 K市民病院にかかられている60才男性の方です。肺癌を治療する為に抗癌剤の治療を受け、下痢が続いている時です。患者さんが下痢を訴えると、「抗癌剤で腸内細菌が死滅した為でしょう。癌の治療の為ですから仕方ありません。」と説明を受けたそうです。確かに肺癌治療の為とはわかっているのですが、毎日の下痢と腹痛に耐えられずご相談にお見えになりました。

 もともと西洋医学は死体から発展した学問です。解剖学が起源です。それに対し、東洋医学は生きている人間を対象として発展した学問です。したがって、薬を始めとした治療方針・手段について、西洋医学は「病名」に対しその対応が決定されます。それに比して東洋医学は「症状」に対してその治療方針が決定されます。漢方薬1つをとっても、こんな症状の時にはこの漢方薬をとなる訳です。起源の違うこの2つの学問は、それから何百年か経て互いに色々と風化したにせよ、全くその違いを現代も残しております。

2)の盲点についてご説明いたしましょう。

 西洋医学の病気の原因を外に求める傾向は重大な「気付き」を見落とすことになりかねません。例えば、インフルエンザにかかったとしましょう。西洋医学的な考えでいくと、悪いのはインフルエンザウイルスです。もしくは、友人がインフルエンザにかかっていたら、「あいつから遷った。」となります。しかし、本当の原因はインフルエンザにかかったその人自身に問題がある訳です。あれ程新型インフルエンザの流行がメディアで報道されても、実はかかった人よりかからなかった人の方が圧倒的に多い訳です。インフルエンザにかかったのはその人のリンパ球がインフルエンザウイルスに勝てなかったからに他なりません。何故勝てなかったかとなれば、その人の免疫力の問題で、免疫力が低下する原因がその人にあったはずなのです。
 病気の原因を外に求めると、最大の原因を見落としてしまう傾向となります。そして同時に自分のリンパ球という最大の味方に気付かないことになる訳です。自分のリンパ球(※2)の機能を高めておけば病気を防ぐことが可能なのに、その存在に気が付かないことになる訳ですから、私が大変困った盲点だと申し上げる理由がおわかりいただけると思います。インフルエンザだけでなく、実は「癌」についても同じことが言えます。ご存知の通り、リンパ球は異形細胞・癌細胞を除去してくれる役目を持っています。最終的にはご自身のリンパ球が何らかの原因で機能低下を起こし、除去できなかった異形細胞がやがては癌細胞になり、分裂を繰り返し拡大していったわけです。

 ちょっとここで「発癌ネズミ」のお話をしましょう。

 あまり良い話題ではなく、この話をする時、私は心が痛むのですが、ネズミを発癌させる需要は実は多いのです。製薬会社は抗癌剤の効果をまずネズミで検証するでしょうし、学者達も癌の研究の為に発癌ネズミを使用します。通常はネズミを発癌させる場合、ネズミの腹腔内に100万個以上の癌細胞を注入しなければ発癌しません。1万個どころか10万、20万個注入しても、全てネズミのリンパ球に除去されてしまいます。ではどうするかと申しますと、ネズミに放射線をかけます。そうすると免疫力(リンパ球の機能)が低下し、1000個の癌細胞を注入するだけで発癌してくれます。
 この話は、ネズミのリンパ球がいかに能力が高いかを申し上げているのではありません。人間、我々もネズミと同じように高い機能を持ったリンパ球を備え持っている訳です。しかし、人間の場合、特に現在はいろいろな複合要因によってリンパ球の機能が低下の傾向にあります。ですから「2人に1人発癌する時代」と言われる訳です。
 そうすると発癌されている方にも、近代西洋医学の現場のドクターにも申し上げておきたいのは、まず病気の原因を外に求めてはならないことと、最大の原因は自らのリンパ球にあったこと、また最大の味方は自らのリンパ球であることに気が付いて欲しいということです。私は抗癌剤の使用も放射線療法も否定するものではありません。それらも必要な時には用いるべきです。しかし、それだけで癌を沈静化させるというのではなく、我々の体内のリンパ球という最大の味方をまず活性化させることを忘れてはならないと思う訳です。

 もともと東洋医学には、人間は四百四病を内包しているという考え方があります。病気は常に我々と共にあり、病と共存という立場です。ですから、「病気になっていない」ではなく「病気を出さない」という考え方の方が理にかなっているし、未病の考え方そのものなのです。
 先程のインフルエンザの話ではありませんが、我々は大学病院の無菌室で暮らしているのではありません。細菌・ウイルス・その他微生物と共存しているのです。要は我々が日々の生活習慣に気配りし、それらに勝つことができれば良いだけなのです。

 自分の体に最大の味方がいます。
 まず、自分の体を信じ、愛することです。

 次回はなぜ免疫力(リンパ球の機能)が低下してしまうのか、免疫力の低下を予防する対策についてお話します。

※1自己免疫疾患
 体の中に侵入した細菌やウイルスなどの異物を排除するための免疫系が、自分自身の正常な
 細胞や組織に対してまで過度に攻撃を加えてしまうことで症状を来す疾患の総称。膠原病な
 ど。

※2リンパ球
 血液の成分である白血球の中の細胞の一つ。リンパ球は主に免疫系に関係し、体をウイルス
 などの異物から守り、また異形細胞や癌細胞を除去する役割を持つ。

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