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【NPJ通信・連載記事】時代の奔流を見据えて─危機の時代の平和学/木村 朗

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第四一回「戦前型の秘密社会・警察国家を許さないために主権者・国民はいま何をすべきか─秘密保全(特定秘密保護)法案の可決・成立を受けて」

2014年5月6日

≪先ほど秘密保全(特定秘密保護)法案が参院本会議で与党(自民党・公明党)などの賛成多数で可決、成立した。 これで今日(2013年12月6日)という日が日本国憲法が停止・破壊され、 戦後民主主義が崩壊・消滅した歴史的瞬間として永遠に記憶される日となるかもしれない。 これからは、市民一人ひとりの覚悟と勇気が試されることになる。その意味でまさに正念場である≫

【参議院本会議での採決の結果】
採決結果は、投票総数212、賛成130、反対82。
※ 賛成投票は、自民党と公明党のみ。反対投票は、民主党、共産党、社民党、生活の党、糸数慶子議員、山本太郎議員など。 みんなの党は欠席、一部議員は出席して反対投票(川田龍平、真山勇一、寺田典城の3議員)。維新の会は欠席。

上記は、昨日の深夜に秘密保全(特定秘密保護)法案の可決の一報を受け時の、その時点での私の偽らざる心境である。 国際環境NGOグリーンピース・ジャパンの佐藤潤一事務局長も、すでに特別委員会での強行採決がなされた時点で、 「日本の民主主義における歴史的な汚点」 「民主主義の基本を否定する愚行」 とする声明を発表している。

この秘密保全(特定秘密保護)法案の成立によって、1年後には秘密保全法制が本格的に始動することになり、 一足先に設置され活動を始めていた国家安全保障会議(日本版NSA)と並んで、戦後日本の国家構造の根本が大きく変えることが決定的となった。 来年に予定されている集団的自衛権行使を正当化する国家安全保障法案や 「共謀罪」 を創設する組織犯罪処罰法改正案などと一体となって、 戦前の日本(あるいは9・11後に愛国者法が制定された米国)と同様のファシズム国家(戦争国家・警察国家)への道を、 加速させることになってしまう可能性はきわめて高くなった。

しかし、言うまでもなく、日本はいまだ国民主権の民主主義国家であるはずだ。たとえ日本国憲法がこれまで何度も蹂躙されてきており、 戦後民主主義が虚妄という一面(「腐れた民主主義」 「疑似民主主義」)を持っていたことが事実だとしても、まだ完全に民主主義が死滅したわけではない。 こうした危機的な事態を招くことになった最大の要因は、 私たち日本国民(一般市民)の無知と無関心にあったと考えざるを得ない(もちろん、その原因・責任を一部の売国的な官僚や政治家、財界人、法曹人、 御用学者、あるいは巨大マスコミやアメリカに求めることは決して間違いではない。 むしろ、そうした事実関係を正しく知った上で、個別具体的な責任追及と批判・弾劾を行うことは必要である。 ただ、そこにすべての重点と起点を置くだけでは新たな展望が生まれることはない)。

私たちは取り返しのつかないほどの大きな誤り・失敗を犯したかもしれないとはいえ、いまからでも遅くはない。 多くの国民は秘密保護法の本質と危険性に気付くのがあまりにも遅かったが、 法案の採決を目前に控えての終盤になってからの国民各層の反対の動きも盛り上がりやいまさらながらとはいえ、 一部の大手マスコミの懸念報道には一縷の望みを見る思いであった。

孫崎 享(元外務省国際情報局長)氏は、ブログ(孫崎享のつぶやき 「秘密保護法の反対を述べるには今から遅いか。 遅くはない。将来につながる。」 2013-12-05 07:28) で 「本来秘密保護法の是非をもっと真剣に考えるべきであった。しかし、政府の案が決まったのが遅かったこともあり、反対の動きは緩慢だった。 しかし、今は違う。でも政府は通そうとしている。その時に今反対することは意義があるだろうか。ある。 第一に運用面だ。範囲が極めてあいまいだ。国民の反対の意識が高ければ運用に影響する。 第2にこの法案は集団的自衛権などと関係する。秘密保護法に疑問を持つ層は、集団的自衛権にも疑問を持つ可能性がある。 秘密保護法を自民党が強行採決しても、この法律を見極め、反対する意義は充分ある」 と指摘されていたが、本当にその通りだと共感を覚える。

主権者である私たちが、改憲草案にも見られるいまの自民党の恐るべき本質を見抜けなかったというこれまでの自分たちの誤りとその責任を自覚して、 歴史の逆流に抗して生きることを選択するならば、現在の深刻な事態を克服する新たな道が必ず見えてくるはずである。 世論の高まりが今後の日本のあり方を決めることになるのである。 その意味で、天木直人(元外務省・レバノン大使)氏の、 「強行採決に踏み切れば安倍首相に対する世論の反発はその後の安倍首相の政策に対する反発に倍返しになって襲い掛かってくるだろう。 おまけに天下の悪法、欠陥法に政治生命をかけた愚かな首相という烙印が末永く語り継がれることになる」 という指摘は正鵠を射ていると思う (「特定秘密保護法案で墓穴を掘った安倍首相」 天木直人のブログ2013年12月05日)。

秘密保護法は、根本的な欠陥法を多く含んでおり、違憲無効であることは明白である。 この法律は、憲法21条だけでなく、自由権規約19条で保障された表現の自由を侵害する違憲立法である。 国連の人権保護機関のトップ、ナバネセム・ピレイ人権高等弁務官が12月2日、参院で審議中の特定秘密保護法案について、 「政府が不都合な情報を秘密として認定するものだ」 としたうえで、「国「内外で懸念があるなかで、成立を急ぐべきではない」 と重大な懸念を表明して慎重な審議を促したことが注目される (「朝日新聞デジタル」 2013年12月3日01時37分)。

また、参議院での委員会採決は、最後は、全く言葉も聞き取れない、議事録もないような状態での採決であり、手続的にも違法無効だといえる。 そのような稀代の悪法を絶対に認めるわけにはいかない。 確かに、秘密保全(特定秘密保護)法案の成立は、私たちにとって手痛い敗北の一つであったことは認めなくてはならない。 しかし、ここからこの法律の効力を停止させ廃止を求める活動を求める新しい闘いのはじまりである。

私が尊敬する政治経済研究者の植草一秀氏は、ブログ 『知られざる真実』(2013年12月6日付) 「特定秘密保護法可決成立は日本民主主義の自死」 のなかで 「このような法律案を強行採決で成立させた安倍政権は、もはや、存立を容認できない存在となっている。 主権者がこの政権を打倒することに正統性が存在する」 とズバリ核心を突く重要な指摘を行っている。 また、いま国民目線での発言・行動を一貫して行って最も注目されている、 無所属の参議院議員である山本太郎氏の 「だから僕は、ここで希望だけを語るつもりはないです。この法案を絶対廃案に持ち込もう、 みんなで力をあわせようって言うのは簡単、でも、今この局面で考えなければならないのは、この法案が通った後、 僕たちがどのようにアプローチしていくか、運用されるまでに一年近く時間がある、 その間にこのとんでもない悪法の中身とそしてこれを推し進めようとした権力者たち、そういう存在があるということを今よりも何倍もの人たちに伝えて、 そして必ず2年後の統一地方選、そして3年後の参議院の改選で100倍返しにしなければいけないです」 という言葉は、 胸に心底から響く(「悪法成立したら100倍返し」 山本太郎 生きるため)2013-12-06。

そして、生活の党・小沢一郎代表が、 「特定秘密保護法を覆すには総選挙で勝つ以外ない」 と 定例記者会見(2013年12月2日) で、語っているのが注目される。

いずれにしても、このまま安倍政権の暴走によって改憲にまで一挙に行き着き 「戦前統制社会が始まる」 「12・6は “あの日が歴史のターニングポイントだった” と、10年後に指摘されることになるだろう」 という日刊ゲンダイが懸念しているような悪夢を現実化させないためにも、 そして民主主義を再び取り戻すためにも私たち一人ひとりが反対の声を上げ続けるしかないのである。

2013年12月7日戦争前夜の中で真珠湾攻撃記念日を明日に控えて

☆辺見庸ブログ より

「いまは正直どんな季節だろうか。あの底なしの阿呆どもにあらがい、あらがうということの、途方もない徒労と、 それを徒労とばかり思い込んできた狡猾な錯視と徒労のくりかえしに、しばらく耐えるべき、じつにかくべつの季節ではないのか。 おもえば、あまりにしたたかに惨めなのである。 しかし、いまはそういう季節なのだ。たったあれしきのことをおまえが 「テロ」 と呼ばわるのであれば、 おおさ、血も凍るテロリズムをおまえたちこそが着々と用意していることを、これから諄々とおしえてやろうではないか。 いまはどんな季節だろうか? ずるっと戦時がきたのである。秘密保護法を、たとえ採決されても、みとめてはならない。」(2013/12/03)

「秘密保護法をわたしは永遠にみとめない。秘密保護法のある、戦争を前提し、もっぱら戦争の脅威によりつきうごかされ収斂される、 いびつな社会の究極の未来像は、この法案の策定者らにさえまったく見とおせていない。 見とおす知も感性も理念もない。なぜならこの政権は、戦争国家実現のために無類の愚者だけがあつまった “無思考マシーン” だからだ。 怖気だつべきである。」(2013/12/04)

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