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【NPJ通信・連載記事】高田健の憲法問題国会ウォッチング/高田 健

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総選挙、9条改憲反対、安倍政権退陣の歴史的闘いへ

2017年10月13日

安倍首相の立憲主義に反する解散の暴挙
 秋の臨時国会の招集日が9月28日に確定したばかりの9月17日、早朝、「安倍首相、年内解散を検討 臨時国会冒頭解散か」というニュースが飛び交った。
 9月28日、安部首相は衆議院を解散し、衆議院議員選挙の日程が10月10日公示、10月22日投開票(または17日公示、29日投開票)決まった。
 野党が憲法53条に基づいて臨時国会の召集を要求してから3ヶ月も放置したあげくの国会開会だというのに、首相の所信表明演説も代表質問も、予算委員会での審議も全て排除しての抜き打ち解散だ。
 国政に関する重要課題が山積する中、説明責任を放棄して、党利党略で解散するなど許されていいわけがない。

 今年の5月3日、改憲派の集会へのメッセージや読売新聞のインタビューで、安倍首相は自らの首相という立場を無視して、憲法第9条の文言はそのまま残して、あらたに自衛隊の存在を書き加えるという改憲案を提起した。
 これは安倍政権のよって立つ右派「日本会議」などの示唆を受けての提起であり、ほとんどの改憲派が一斉に従来の主張を転換して、安倍首相の新しい提案を支持するに至った。
 これまで掲げていた自民党改憲草案との整合性がないことを指摘するものは、自民党の石破茂らごく一部にすぎなかった。

 少し前までは、解散・総選挙の実行は、安倍政権が憲法改悪の国会発議に必要な改憲派議席3分の2を獲得したという稀有な条件を生かして、秋の臨時国会のうちに自民党が改憲案を作成し、来年の通常国会で改憲案の審議・採決を行い、改憲の発議をしたあとになるということが大方の分析だった。
 安倍首相は相当に無理なことであるにもかかわらず、改憲のための国民投票と総選挙の同時投票実施の可能性すら示唆していた。
 改憲手続き法によれば国民投票は改憲の発議後、2ヶ月から6ヶ月の間に実施しなければならないことになっている。だから、たとえ通常国会を多少延期しても、来年12月の衆議院議員の任期切れ直前の8月頃から12月頃には解散があり得るという見通しだった。
 にもかかわらず、なぜ、この時期に安倍首相らは急きょ、このような乱暴極まりない解散を決意したのか。

安倍首相はなにをねらっているか
 解散・総選挙は、憲法改悪をねらう安倍晋三首相にとっては大きなリスクをともなうものだ。
 もしも、立憲野党4党などの奮闘で、衆議院の改憲勢力が3分の2を割るようなことになれば、改憲発議の条件を失うことになる。
 また、自民党が議席の過半数を失うようなことになれば、安倍総裁の政治責任問題となり、安倍政権退陣の可能性が濃厚になる。
 もし、この時期の改憲に失敗すれば、しばらく改憲発議は不可能になるといわれた。
 にもかかわらず、安倍首相と与党が解散総選挙に踏み込む決断をした背景にはいくつかの要因がある。

 第1に、東京都議選での自民党の大敗や、仙台市長選での野党共同候補の勝利は、前通常国会での森友・加計疑惑、稲田防衛相などに現れた日報隠しなど南スーダンPKOへの自衛隊派遣問題や都議選での自衛隊の政治利用、禁じ手の「中間報告」による共謀罪審議の打ち切り、閣僚や自民党議員の政治腐敗やスキャンダルなどなど、「安倍1強政権」と言われた強権政治と政府与党の奢りへの批判の結果であった。
 しかし、このところ、急落していた内閣支持率が、内閣改造効果や朝鮮半島の緊張の激化などから、回復傾向に転じたこと。

 第2に、民進党の新執行部体制の混迷と一部議員の脱党、前原体制のもとで民進党の支持回復が見込めず、また野党共闘があまり進まないうちの解散を狙ったこと。

 第3に、朝鮮半島情勢の緊張の激化が安倍政権与党の支持拡大にとって有利にはたらくと思われること。
 一般に戦争など国家的な危機においては、政権与党への支持が増大する傾向がある。安倍首相は20日の国連総会の演説で以下のような危機感を煽り立て、憲法の平和主義にもとづく外交と対話による解決の道を全く否定する最悪のスピーチをおこなった。
 「対話による問題解決の試みは一再ならず、無に帰した。なんの成算があって我々は三度、同じ過ちを繰り返そうというのか。必要なのは対話ではなく圧力だ」と。
 これが憲法第9条をもつ国の首相の国連演説だろうか。

 第4に、東京都議選で自民党敗北の一つの要因となった都民ファーストなど、保守新党結成の準備が必ずしも整わないこと、などの理由が考えられる。

 これらのことから、安倍晋三首相はいまこそが来年末になってからの任期切れ解散まで追い込まれる前に、主導的に解散に踏み切ることができる絶好のチャンスと考えたに違いない。
 ただ、この場合、党利党略のための解散への人々の批判の増大や野党の共闘が進んだ場合などで、改憲発議に不可欠の改憲勢力3分の2の議席を失う危険もある。
 安倍首相は当然にもこれも想定しているだろう。
 その危険を押して解散に踏み切った彼の念頭にあるのは、従来の改憲戦略(3分の2議席のあるうちの解散)の変更であり、それは改憲勢力の政治再編ではないだろうか。
 安倍首相は自公与党のみにとどまらず、維新や小池・若狭・細野らによる新党、さらには民進党まで含めた改憲大再編を考えている可能性がある。
 これへの警戒を怠ることは出来ない。

民進党前原執行部の動向について
 安倍9条改憲が選挙の最大の争点に浮上しているなか、民進党前原執行部体制の野党共闘や憲法問題に対する態度は、従来の岡田・蓮舫執行部の方針とは変化しており、注意を払う必要がある。

 市民連合は昨年来、野党4党と政策合意をつくり、参院選では立憲野党と市民連合の共闘で全国32の1人区において候補者の1本化を実現し、善戦した。「立憲野党4党+市民連合」は自公与党を打ち破る希望の選択肢として浮上してきた。
 この立憲主義擁護の最後の機会になりかねない今回の総選挙において、前原執行部のとっている路線には、従来の岡田・蓮舫執行部の野党共闘路線とは微妙な違いが生じている。
 この条件のもとで、早期解散となった現在では全国289小選挙区の全てで野党候補の一本化を実現することは容易ではない。
 私たちは野党間での一定の必要不可欠な政策での合意を基礎に、民進党も含めた安倍政治に反対する4野党が可能な限り候補者調整をおこない、候補者を一本化して与野党対決の構図を作り、有権者が立憲主義と民主主義を選択できるような野党の協力を実現できるよう奮闘するつもりだ。

 報道によると民進党は、従来の執行部が「安倍政権の下では改憲論議に応じることはできない」と言ってきたこととは異なり、憲法問題の議論を避けないなどとして、衆院選の公約に「首相の解散権の制約」「知る権利」「国と地方のあり方」を柱とする憲法改正案をいれるといわれている。
 いうまでもなく今回の安倍の解散が不当であることはあきらかで、憲法第7条による解散権はいまほど野放図に行使して良いものではないことは明白だ。しかし、この制限には明文改憲は必須の条件ではない。国会決議など、改憲なしに解散権の制約が実現できる方途はある。
 他の「知る権利」などの改憲についても、この間、私たちが主張してきたとおり、新しい人権の保障や地方自治改革に明文改憲は不可欠ではない。
 民進党のこの方針は、憲法に基づいた政治の実行をないがしろにし、立憲主義を破壊し、9条など憲法改悪をねらう安倍政権の壊憲に口実を与えるものであり、妥当ではない。

 安倍政権の下での改憲論議に応じられないのは、「立憲主義」の立場に立たない政府との間には、憲法を議論する共通の土俵はないということなのだ。
 まして、いま必要なことは、憲法の精神を生かした政治の実現であり、あれこれの憲法の条文いじりではない。

私たちはどう闘うか

 今回の総選挙に於いて、安倍政権の悪政を終わらせるために、立憲4野党が安倍政権を打ち倒すために、安倍政権が企てる改憲、とりわけ憲法9条の改憲に反対し、戦争法、秘密保護法、共謀罪などの廃止、原発再稼働反対など原発ゼロの実現、森友・加計疑惑の徹底追求、子ども、若者、労働者など全ての市民の生活と権利の擁護、向上など、市民連合結成以来私たちが要望してきた共通政策を受け止め、「4野党+市民」の選挙を可能な限り全国で実現し、ともに闘うよう働きかけをつづける。
 全国各地で、市民連合を誕生させ、強化して、市民が主権者として主体となり「政治を変える、選挙を変える」を文字通り実現しなくてはならない。

 「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が提起している「安倍9条改憲NO!3000万署名」運動は私たちのこの闘いの柱だ。 
 いうまでもなく、この署名運動は総選挙の公示期間中も含めて、公選法の禁ずる「政治活動」ではないのであって、運動は継続できる。
 私たちは全国の草の根の街頭で、地域で、この3000万署名運動をいっそう積極的に展開しよう。
 全国の至る所で、安倍改憲NO!、戦争反対、民主主義と権利の実現のための行動を起こし、世論を変えるために奮闘しよう。
 選挙戦の勝利のための努力は、こうした市民の行動と両輪の闘いだ。
 私たちはあきらめない。
 市民連合は、野党各党や世論への働きかけを可能な限り努力し、継続している。
 私たちのこの立憲4野党の共同の実現の働きかけが成功する可能性は十分にある。
 この実現こそが、全国のこころある市民・有権者の願いだ。

 このことを通じて、来る総選挙で安倍政権の与党を一人でも多く落選させ、安倍改憲派に3分の2はもとより、安倍自民党を過半数割れに追い込み、安倍政権の退陣を実現する闘いをすすめよう。

 いよいよ歴史的な闘いが始まった。

                       (「私と憲法」2017年9月号所収・高田健)

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