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【NPJ通信・連載記事】高田健の憲法問題国会ウォッチング/高田 健

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総選挙後に考える今後の可能性
~安倍改憲を阻止する歴史的なたたかいへ

2017年11月27日

安倍晋三の勝利に見るもの

 安倍晋三首相の究極の党利党略によって仕組まれた「国難突破解散・総選挙」は、結果として彼の思惑どおりになったようである。

 安倍首相は朝鮮半島の危機を煽り立て、この対応のためには「安定した、強固な政権が必要だ」などと自党への支持を強要し、有権者を脅し続けた。
 世界各国の政府でさえも、朝鮮半島の危機を解決するためには対話が不可欠だと言っているにもかかわらず、隣国の安倍信三首相のみが「対話のための対話は意味がない。いま必要なことは圧力のみだ」などということで、緊張を激化させている。
 あたかも問題解決のために、憲法9条が障害になっているといわんばかりである。

 こうした安倍政権の下で、万が一、戦争が勃発したらどういうことになるのか。
 10月10日のTVで 福江広明元空将と池田徳宏元海将は北朝鮮に対する日本のミサイル防衛態勢について以下のように発言した。福江氏は「状況によって迎撃率は変動する。経験則で総じて言うなら7~8割、8~9割を誇っている」といい、池田氏は「100%とは言わないが、相当高い確率で迎撃できる」と述べ、「国民の皆さんはイージス艦が全部守っているということで安心していただければと思う」と語ったのである。
 冗談ではない。撃ち漏らした3割から2割の弾頭の下にいるのは市民である。
 安倍首相の圧力路線がこうした事態を招くことは絶対に許されない。

 安倍首相はこのような危険な賭けを強行する権利を手に入れようと解散をしたのである。
 3年前、沖縄県知事選の応援演説で俳優の故菅原文太さんはこう言った。「政治の役割はふたつあります。一つは、国民を飢えさせないこと、安全な食べ物を食べさせること。もう一つは、これが最も大事です。絶対に戦争をしないこと!」。
 まさにアベノミクスで格差貧困を拡大し、「国難突破」などといって選挙を利用し、戦争の危機に民衆をさらけ出している安倍首相は、政治の役割を放棄しているに他ならない。
 この手口はかつてのナチスが全権委任法によって戦争を推進した手口そっくりである。

 
立憲民主党、共産党、社民党、市民連合

 10月22日に投開票された第48回総選挙は、自公与党が313議席で改憲発議可能な3分の2(310議席)以上を確保した。
 立憲主義を擁護し、安倍9条改憲に反対した立憲民主党、共産党、社民党の立憲野党勢力は、69議席+野党派無所属約20議席程度で約90議席という結果だった。
 立憲民主党は55議席を確保し公示前議席16の3倍という大躍進だったが、共産党は公示前21から12議席と大きく後退した。社民党は2議席を死守した。
 改憲派の枠に括ってよい「希望の党」と「日本維新の会」は合わせて61議席であった。
 (原稿を書いている現時点で、各党の得票数などの詳細な分析は不可能で、次号に譲りたい)
 いずれにしても安倍政権の勝利である。

 しかし、選挙期間中の各メディアによる世論調査は軒並み「安倍政権を支持しない」が「支持する」をかなり上回っていた。
 にもかかわらず、安倍政権が議席で勝利を手に入れることができたのは、森友・加計疑惑などで追い詰められていた安倍首相が、前述した朝鮮半島の危機になどを使い 「国難突破」と称して野党の準備が整わないうちに抜き打ちで解散し総選挙に持ち込み、加えて小池百合子東京都知事による「希望の党」の立ち上げと野党第1党であった前原「民進党」の吸収という前例を見ないような策謀によって、野党側の体制がガタガタになったことに助けられたものだ。小選挙区制を生かして与党以外の勢力を分断した結果だった。

 周知のように、もしもこの総選挙に2015年安保闘争以来形成された「立憲野党4党+市民連合の共闘」対安倍政権与党という対立構図が持ち込まれれば、前回の総選挙の各党獲得票数で換算すると、与党が少なくとも60議席、場合によっては100議席以上減らすことは必然だった(24日の朝日新聞は「立憲、希望、共産、社民、野党系無所属による野党共闘」が成功していたら、今回の得票で63選挙区で与野党逆転ができた、と書いている)。
 安倍首相は3分の2議席を失うことを覚悟して、この解散・総選挙で、のるかそるかの大博打を打ったのである。前号で指摘したように、この場合は安倍首相は改憲のために、選挙後の政治的大再編を構想していたにちがいない。

 昨年末以来、全国各地で新しい市民の政治運動である「市民連合」が形成され、それが立憲野党4党の共同を推進し始めていた。
 市民連合は、野党各党との政策協定を結び、統一候補を作り出すというかつてない市民運動だった。
 この運動の効果は、昨年の参議院選挙の全国32か所の1人区の闘いで証明済だった。
 市民連合は立憲野党の候補者の1本化を実現するために、野党4党の幹事長・書記局長らとの間で7項目の政策合意を作り上げていた。
 各地の市民はこの市民連合を衆議院の小選挙区289か所に結成しようと奮闘中だった。
 しかし、この運動は9月28日の解散に際してはあまりにも時間が足りず、間に合わなかった。われわれの力の不足を痛感させられる出来事だった。

 加えて、立憲野党の柱であるべき民進党の前原誠司代表が、小池百合子代表の希望の党に政党丸ごと身売りするという事件が起きた。
 前原氏は2年近くにわたる市民連合との共同の積み上げと約束を反故にして、小池氏が示した安保法制容認、改憲容認の踏み絵を踏み、希望の党による選別・排除を受け入れた。

 この危機的な事態を前に、全国の市民は民進党代表選を前原氏と争って敗れた枝野幸男氏に「枝野、立て!」の声をツイッターやメールで送り続けた。SNSの威力がいかんなく発揮された。筆者もこうしたツイッターでの市民の叫びをいくつも見た。
 この力におされて枝野幸男民進党代表代行は「立憲民主党」を立ち上げた。
 枝野氏の胸中はいかばかりか、政治家としてこれほど名誉なことはないだろう。
 ある意味で、立憲民主党はSNS時代に市民が作った政党となった。

 立憲民主党は結党後、改めて市民連合と7項目の政策合意を結び、野党3党と市民連合も同席のうえ、記者会見もひらいた。
 いったん、崩された立憲野党と市民の共闘が急速に立て直された。
 共産党は市民と野党の共闘という路線をブレずに堅持し、候補の1本化のために全国60数か所で独自候補を取り下げ、立憲民主党と社民党の候補に譲った。
 立候補を取り下げれば自党の比例区の選挙にマイナスになることを承知で決断した共産党のこの姿勢は、多くの市民にリスペクトされ、共感を呼んだ。
 市民連合は共産党、立憲民主党、社民党、良心的な無所属の候補など、統一候補を支援して、その勝利と、7項目の基本政策の実現をめざして、全国でこの選挙戦を自らのたたかいとして献身的に奮闘した。

 
安倍改憲と私たち

 当初、マスコミの大々的な報道で「政権交代」などということまで叫んでいた希望の党は、小池氏の独裁的な党運営や、その政策のあまりにも第2与党的な路線が見透かされ、立憲派の反撃の下で急速に支持を失っていった。
 小池氏の党は幹事長もおらず、執行部もない、政党の体をなしていない小池氏の独裁政党だった。同党は最後に小池氏の開票日のフランス行きに対応してほとんど政治的実績のない樽床伸二氏を代表代行にあてただけであった。

 選挙の結果、立憲民主党が野党第1党の位置を占めた意義は大きい。
 憲法審査会の自公改憲派の主流派・憲法族や公明党は、従来から民主党を想定してその変質を狙い「改憲は少なくとも野党第1党を巻き込んで」といってきた。
 改憲を与党のみで強行したといわれるのを避けたいがためだった。
 露骨な改憲派がいなくなった立憲民主党が野党第1党になったのは、改憲派のこの計画にとって痛手となるであろう。

 安倍首相は10月23日、早速、記者会見で「公約に沿って条文について党内で議論を深め、党としての案を国会の憲法審査会に提案したい」などと語り、改憲を進める決意を示した。
 そして、野党第1党の立憲民主党が改憲案を厳しく批判していることを念頭に、「政治であるから、皆様全てにご理解をいただけるわけではない」と、合意できる党だけで発議をめざす姿勢を示した。
 10月23日、立憲民主党の枝野代表は「野党との合意形成を進める努力がない」と述べ、安倍政権が進める憲法改正を牽制した。
 特に「憲法は最終的に国民投票があるので、もし強引に進めようという気配があれば国民運動を進めていきたい。最終的に国民投票で否決すれば改悪はできない」と強調した。
 総選挙後、各党の思惑から多少の政局はあれ、国難対処を掲げた安倍首相の狙う「憲法9条改憲」と、これに反対し、朝鮮半島など東アジアの平和を求める「国民運動」(枝野代表)の闘いが激化せざるをえない。
 この対立の下では、小池氏の「希望の党」と「日本維新の会」は安倍与党と同じ側に立たざるを得ない。
 3極の対立ではなく、まさに2極の対立である。

 
いよいよ安倍改憲との真正面対決だ

 2015年の戦争法に反対するたたかいも国会では圧倒的少数であった。
 しかし、野党と呼応した国会外の巨万の市民の闘いは安倍政権を窮地に追い詰めた。
 安倍政権に不支持が多い世論のもとでの市民の巨大な闘いが、自民党を揺さぶり、公明党を揺さぶり、希望の党を揺さぶって、改憲の動きを止めるような展開を作ることは夢ではない。

 この第48回総選挙のなかで、私たちの市民運動は全国で時間を惜しんで奮闘した。
 連日のように憲法問題や、投票率UPのためのチラシをポスティングした人々、プラカードを掲げて街角に立った人々、9条改憲反対の署名運動を広げた人々、支持する候補者のためにマイクを握ったり、政策チラシを配った人々、電話で候補者に支持を訴えた人々、市民連合の結成や運営に携わった人々、さまざまな市民運動の仲間たちが、政党任せにすることなく、選挙運動を主権者としての自分の責任としてとらえ、困難をおして取り組んだ。
 あたらしい形の市民運動が生まれている。

 今回の総選挙の結果から私たちは政治への失望だけではなく、新たな可能性への確信も導き出すことができる。
 いよいよ安倍改憲との真正面からの対決の時期が来た。全力をあげて、9条改憲阻止、戦争する国を許さないたたかいを闘い抜こう。

                        (「私と憲法」10月25日号所収 高田健)

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