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【NPJ通信・連載記事】高田健の憲法問題国会ウォッチング/高田 健

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「勝負は国民投票で」という幻想を捨て、
改憲発議阻止へ

2018年1月11日

 安倍晋三首相が2017年5月3日に発言した改憲案、現行憲法の9条をそのまま残して、あたらしく自衛隊の存在を確認する条文を付け加えるという改憲の奇手、私たちはいまこれを「安倍9条改憲」と呼んでいる。

 2006年の9条改憲発言、2012年の自民党改憲草案、2013年の96条改憲案、2014年の集団的自衛権についての憲法9条の解釈変更とそれにつづく戦争法、試行錯誤しながらも安倍晋三が一貫して敵視してきた憲法第9条の改憲。
 今回の安倍9条改憲案は、9条改憲に反対する根強い世論に手を焼いた安倍首相の窮余の一策だ。

 自民党はこれに教育無償化、参院の合区解消、緊急事態における衆議院議員の任期延長の3点を加え、4項目の改憲案の作成の準備に入った。しかし、改憲派の中でまとまるのは必ずしも容易ではない。

 この安倍改憲発言以後、「やむなし」とばかりに追認してきた右派も、日本会議の田久保忠衛会長らが先ごろの総選挙を経て勢いづいて「生ぬるい」との批判を始めた。
 自民党内にも12年の改憲草案の「国防軍」規定や緊急事態条項導入にこだわる石破茂ら右からの批判がある。
 従来、野党との協調を重視してきた自民党憲法族からは、首相の改憲の進め方が強引すぎることへの批判がある。
 創価学会に支えられる公明党は、安倍9条改憲に必ずしも積極的ではない。
 改憲派の維新の会は第1にアピールしたい「教育無償化」に自民党が消極的なことから、関係がぎくしゃくしているし、希望の党は細野憲法調査会長が安倍の9条改憲同様に自衛隊明記を主張しているが党内の合意はとれていない。
 改憲派総体に矛盾が内在している。
 自民党の中では、当初目指していた通常国会での改憲発議を、秋の臨時国会にずらす動きが出てきた。
 これらの動向を見て、12月21日の産経新聞はいらだちを隠さず、「自民党推進本部 条文案策定へ日程示されず 改憲道のり 亀の歩み」という記事を掲載した。

 時事通信が「憲法改正の発議を2018年召集の通常国会で行うべきかどうか」について、12月6~11日に実施した世論調査では、「反対」が68.4%と7割近くに上った。「賛成」は20.9%。
 7割の中身は「改憲を急ぐことに反対」が51.3%、「そもそも改憲に反対」が17.1%だ。
 自民党支持者でも「反対」は過半数を超えた。
 また朝日新聞社が10月23、24日実施した全国世論調査では、安倍首相が企てる憲法9条改正の「自衛隊明記」について、「反対」45%、「賛成」36%だった。 
 民意の多数は自衛隊明記の改憲に疑問を示しているのがわかる。これに先ごろから始まった「安倍9条改憲NO!全国アクション」による3000万署名運動が進みつつあり、世論の形成に重要な役割を果たすに違いない。

 確かに今回の総選挙で、改憲派は3分の2以上の議席を占めて、国会が改憲を発議できる条件を確保した。
 しかし、議席は発議のための重要な条件ではあるが、世論の動向、国会内の与野党の動向などもまた大きく影響する。
 私たちは目下、安倍改憲発議を阻止する課題に全力を挙げたい。
 安倍首相が企てる2018年中に国会で発議する計画など許せるものではない。
 戦後最大の政治課題である改憲問題を、首相と与党がわずか1年弱の国会審議で強行するなど、立憲主義に全く反する行為だ。
 先の戦争法ですら、2014年の通常国会から始めた憲法解釈の変更の動きは同年臨時国会、翌年の通常国会をかつてない長期の延長で9月19日まで、計3国会かかっている。
 憲法の審議はこれだけの期間を費やしたとしても短かすぎる。
 安倍政権が急ぐ早期の改憲発議は絶対に阻止しなくてはならない。

 こうしたなかで、運動圏の一部に「勝負は国民投票で」と改憲国民投票を積極的にすすめようという意見がある。これは重大な勘違いだ。
 2007年5月に成立し、2014年6月に改訂された現行改憲手続法(いわゆる国民投票法)は重大な問題がある悪法であり、この法律のもとでの改憲国民投票は民意を正当に反映することができない。
 この改憲国民投票は、いわゆるレファレンダム(民意を正当に反映する国民投票)ではなくて、プレビシット(為政者が自分の地位や権力を守るために民意を利用する)になる可能性が高い。
 国民投票を直接民主主義として無条件に「善」とする考えはあまりにもナイーブすぎる。
 過去にも、ナポレオン1世、3世の皇帝就任やヒトラーの総統就任、オーストリア併合などで「国民投票」が利用されてきた。
 この改憲手続き法の下の「国民投票運動」には、公正を期するための歯止めがほとんどない。
 ビラやリーフレット、宣伝カーやTVなどメディアを使った宣伝などの規制がなく、「自由」に行われる。
 テレビ、ラジオなどの有料広告がほとんど規制されていない。
 これでは資金力の豊富な改憲派が「改憲の世論」を作ることが可能で、改憲がカネで買われる状況になる。
 また最低得票率規定がなく、投票率がどんなに低くても、その過半数で改憲が認められることになる。
 国民投票運動期間は60日~180日とされ、最低、2か月で投票に持ち込まれる恐れがある。
 公務員の国民投票運動に不要な規制がかけられる可能性があること、などなど、国民投票の公正・公平が保障されていない。

 この改憲手続法の抜本的再検討なしに、国民投票が行われることを許してはならない。
 11月30日に開かれた衆議院憲法審査会で、社民党の照屋寛徳委員は、「広告資金量の差、発注タイミングの差などによって世論が左右され、印象操作が進められる可能性がある」「権力を掌握し、金力に勝る改憲派に有利な制度となっている」と指摘したし、筆者は12月7日に開かれた立憲野党5党と市民連合の「意見交換会」の際に、この問題提起を行い、出席していた立憲民主党の福山幹事長から「大方、同意する」旨の回答をもらった。
 引き続き改憲手続法の暴露と、その抜本的な改正のための闘いが必要だ。

 繰り返すが、安倍9条改憲を阻止する闘いにとって、いま必要なことは安易に国民投票に期待を寄せることではない。
 安倍政権と与党が企てる危険で欺瞞的な9条改憲発議を止める闘いを起こすことだ。
 そのために、いま、全国各地で力強い運動が展開されている3000万署名などを軸に国会内外が呼応して世論を起こし、与党とその追従者を揺さぶり、改憲発議が困難な状況を作り出すことだ。      
                      (「私と憲法」2018年1月1日号所収 高田健)

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