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踏みにじられた沖縄の民意

寄稿:飯室 勝彦

2018年10月20日

 辺野古に基地をつくるな――沖縄県民の怒り、悲痛な叫びをせせら笑うかのように、安倍晋三政権は強引に新基地を建設する道を選んだ。実務を直接担わされる石井啓一国土交通相が所属するのは「平和の党」を標榜する公明党である。連立与党の立場を利用して安倍首相から”踏み絵”を迫られているようにもみえる。民主主義を無視した安倍政治の暴走をこれ以上許してはおけない。

◎「丁寧な説明」はまた嘘だった
 沖縄の米軍普天間基地(飛行場)に替えて名護市辺野古に新基地を建設する工事について、防衛省が県による沿岸部の埋め立て承認撤回への対抗措置をとった。行政不服審査法に基づく審査請求と撤回効力の一時停止を国土交通相に申し立てたのである。政府は一時停止が認められれば中断している埋め立て工事の再開に踏み切る構えだ。
 政府の措置は、「辺野古ノー」を主張した玉城デニー氏が、自民、公明党などの推す建設容認の候補に8万票もの差を付けて圧勝した、知事選の結果をまったく無視している。
 沖縄県民は圧倒的票差で玉城氏を知事に選んだ。2代続けて新基地を拒否する知事の誕生である。国政と地方自治体の行政という立場の違いがあるとはいえ、有権者の意思表示を真摯に受け止め尊重するのが民主主義下の政府の在り方ではないのか。政府の対抗措置は民意を顧みようとせず有権者を無視した暴挙と言えよう。
 
 知事選の直後、政府側は「丁寧な説明をしてゆく」と表明していたが、首相と知事はたった30分間会っただけである。しかも会談終了を待っていたかのように5日後には対抗措置をとった。
 「丁寧な説明」は首相が窮地に陥った時に追及をかわすために使う常套句だが、こんども沖縄県民の心の奥からの叫びをじっくり聞き、相手が納得するまで説明する気などなかったのだろう。会見は「会った」という形を整えるだけが目的の儀式だったとしか思えない。
 
◎”強引”な安倍流の政治手法
 政府が結論の出るまで時間がかかる司法に訴えず、行政不服審査法に基づく不服審査と効力停止の申し立てによる対抗を選んだのは、
 結論が早く出て工事再開が早まるからだという。2015年に翁長雄志前知事が埋め立て承認を取り消した際にも同じ手続きをとった。
 そのとき、行政不服審査法の手続きは「国民の権利救済」のための法律であり、行政が他の行政への対抗手段として使うのは法の趣旨に反する、と批判された。そもそも行政当局の訴えを身内の行政担当者である大臣が裁くのでは公平・公正はとても期待できない。こんども同じ指摘を受けているが政府には「馬の耳に念仏」だ。まして石井国土交通相が、連立離脱までかけて独自の判断をするとは考えられず、はじめから結果の分かっている勝負のようなものである。 
 
 難局を”強引”に突破するのが安倍流政治の常である。必要とあれば憲法や法律を自分に都合よく解釈し、時にはねじ曲げる。民意など気にしない。
 安保法制が典型的だ。集団的安全保障に関する政府解釈を変更し、法案を無理やり国会通過させた。辺野古の新基地建設では行政不服審査法を利用して工事の早期再開を狙っている。法案の単独採決などは枚挙に暇がない。

 執念の改憲実現に関してもシフト強化に怠りはない。世論調査では改憲が昨今の政治の優先課題と考えている人は少なく、自民党内にも慎重論が多いので、自民党案の早期国会提出が難しそうと分かると、党人事をがらりと入れ替えた。党の憲法改正推進本部長、衆院憲法審査会の与党筆頭幹事などに積極派の腹心を据え、慎重派を要職から外してしまった。
 首相はなんとしてでも「改憲を実現した唯一の総理」になろうと懸命だ。憲法第9条をそのままにして自衛隊の存在を明記することを現段階の改憲目標にしており、陸上自衛隊の観閲式で「自衛隊員が強い誇りを持って任務を全うできる環境を整えるのは、今を生きる政治家の責任だ」と、改憲に反対したり慎重論を唱えたりする政治家は無責任であると隊員を扇動するかのような訓示をしている。

◎沖縄の現実に目を向ける
 政府は辺野古の新基地建設は普天間返還のためだという。たしかに「世界一危険な飛行場」と言われる普天間は一日も早く廃止、返還されなければならない。だが、辺野古の美しい海を埋め立て、事実上は恒久的な新基地を地元の反対を押し切って建設するのは本末転倒だ。県民は基地の整理縮小を求め、「新しい基地はつくって欲しくない」と言っている。沖縄県民に歓迎される普天間返還でなければならない。
 沖縄には在日米軍専用施設の約70%(面積)が集中し、それらは沖縄本島の約15%を占めている。飛行機やヘリコプターの事故、騒音、米兵の犯罪など基地の存在は県民の生活や自然環境に大きな影響を与えている。基地が地域開発の阻害要因になっている側面もある。
 必要なのは首相をはじめ政府の面々が一人の人間として沖縄に寄り添い、県民の声に耳を傾けることである。それなのに安倍首相はアメリカ、トランプ大統領の方ばかり向いていないだろうか。高額の武器を買ってくれたと褒められたり、基地費用負担のさらなる増額要求を押しつけられてもろくに反論もしない関係に甘んじているのではなく、基地負担に苦しむ沖縄の声を汲み上げアメリカにぶっつける対等な関係でなければならない。
 安倍首相が相手にすべきなのは沖縄県民ではなく米軍でありアメリカであるはずだ。

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