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【NPJ通信・連載記事】一水四見・歴史曼荼羅/村石恵照

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自由民主党と立憲民主党の「民主」を厳しく見守ろう

2017年11月1日

「財(たから)あるものの訟(うった)へは、石をもって水に投ぐるがごとし。
乏(とも)しきものの訟(うった)へは、水をもって石に投ぐるに似たり。
ここをもって貧(まず)しき民(おおみたから)はすなはちせんすべを知らず。
臣(やつこらま)の道、またここに闕(か)けぬ。」(「憲法十七条」第五条)

「憲法十七条」は、まさに民主の意味の根本を述べた公僕(国家公務員)に対する誡めである。

民主は、人民が主体の政治というイデオロギーは第二義的意味で、まず第一に国民自体の安穏の生活が政治目的の「主」、第一義ということである。

国民とは、「おおみたから」、国の最も重要な宝としての人的資源である。
ここに古代天皇制下での下僕というようなイデオロギーを持ちこんだ解釈をする必要はない。

天皇は、日本国民と諸国民との共存繁栄を祈る文化的象徴であり、
日本で行われる一切の言説の中で、和歌(やはらぎのうた)を伝承することと基本食としての稲穂の豊作を維持することが本務である。

十七条憲法においては、天皇も臣下も民も、組織上の役割であって、すべて「凡夫(ただひと)」である。

日本は、エリート主導の西欧文明ではなく、庶民の人材で成り立つ国柄であることを明確に述べたのが憲法十七条だ。

その庶民に奉仕するのが、公僕としての国家公務員であり、国会議員である。

                  ***

現在進行中の安倍政権と野党の混乱した政治状況全体を鳥瞰して、

「「立憲民主」と「自由民主」と、いずれの「民主」が国民にとってよいのかが問われる選挙である。」

と書いた(2017/10/8 執筆)。

10月22日の選挙の結果、「自由民主」が政権与党を維持し、「立憲民主」が野党第一党になった。

安倍政権にも枝野野党第一党にも、それぞれに別の意味で、欠陥と危うさを一国民として感じている。

それでも「自由民主」と「立憲民主」と、いずれの「民主」が国民にとってよいのかが問われた選挙結果となった。

                  ***

公明党と共産党は、それぞれに強い組織票に支えられている政党である。

が、小選挙区制や選挙戦術の面、有権者が18歳以上となったなどの要因を考慮しなければならないとしても、政権与党に寄り添う姿勢の公明党の基本的性格に選挙民は厳しい目を向けてきたかもしれない。

これから始まるだろう憲法論議の中で、公明党の姿勢が改めて浮き彫りにされるかもしれない。

共産党は、政権批判勢力の一角を堅固する政党として評価されてきたが、この政党の「民主」という意味が改めて試される時期を迎えているのかもしれない。

そして現政権が、日本を守ると言いつつも、その内実は、軍・産・金融のトライアングルグローバリストの方向に絡めとられ、米政権の軍事的二軍化の方向に傾いているのではないか、という懸念を払拭できないという声が一部の識者と鋭敏な政治感覚の国民の間に聞こえる。

さらに、自称日本の伝統を尊重するという保守勢力がグローバリストの投網に絡めとられているだけではなく、日本の伝統的価値の破壊に導いているのではないか、との危惧を感じざるをえない。

                  ***

立憲民主党にも、別の意味での危惧をもっている。
 
かつて「なんでも反対社会党」という批判の声があったように記憶している。

対案を示さず、国民に夢を与えるビジョンを描いていなかったことの揶揄である。

しっかりとした、国民の安心した生活を約束する提案と実践をする「民主」党であってほしい。

「数合わせ」の党員拡大を図らず、グローバリストや原発推進、TPP賛成などにかかわった民主党で重責を占めた人物は――公言する必要はないが――公僕の自覚をもってしっかりと「選別」する必要がある。

政権交代を目指す、などという政治の手段と目的を混同したスローガンを叫ばず、
国民の生命と安全を守る自衛隊の世界的平和部隊の意義を確認し、
観念的思考の政治学者の意見は避けて、
アジアの中の日本という地政学的意味と
世界の覇権政治における非覇権性の日本国の意義とに深く思いをいたした上で、

日本国憲法における民主の意義を確認してほしいものだ。

                  ***

改憲論議自体を避けることは憲法上できない。

この覚悟は必要である。

しかし、日本国憲法は日本の政治的言語空間にのみに活用されるのではなく、世界の(実際は混濁した)法治言説の中での日本国憲法である、という視点を導入する思考が必要である。

立憲民主党は、核武装とか、天皇の政治利用の根底をなす天皇の元首化とか、富国強兵とか、明治憲法の瑕疵をよく研究する必要がある。

立憲民主党の党首は、他人とのしがらみだけでなく、自らの過去のしがらみを全部捨てる覚悟で民主の政治を行ってほしい。

今上天皇は、繰り返し「象徴」天皇であると訴えているにもかかわらず、元首化しようとする意見がある。

日本国憲法においては、象徴は高位の理念であって元首の概念と併記してはならない。

立憲民主党には、日本国民とアジアの人々との共存をめざした理念を描いて、国民の同意を得ながら未来志向の「日本の夢」民主国家を語ってほしい。

                                  (2017/10/19 記)

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