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【NPJ通信・連載記事】高田健の憲法問題国会ウォッチング/高田 健

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「お前は国民の敵だ」、現職自衛官による民進・小西氏への暴言を許さない

2018年5月17日

 「日本会議」など極右勢力を基盤として、国家の私物化をすすめてきた安倍政権のもとで、国家・行政権力の前代未聞の腐敗・崩壊現象が露わになっている。

 森友・加計学園疑惑にまつわる公文書の改ざん、隠ぺい、防衛省のシビリアン・コントロールの崩壊、財務官僚によるセクハラなどなど、政府と国会、市民との関係は極めて異常な事態を迎えている。
 23日の東京新聞は1面トップで「異常事態の安倍政権 疑惑・不祥事3カ月で『13』」と報じた。
 あらためて国家的犯罪「事件」の多さに驚かされる。

 にもかかわらず、立憲野党の共同した追及に対して安倍政権は、真摯な議論を避け、責任の所在を明確にしないばかりか、真実を隠蔽し、居直り、逃げ回っている。
 右派系の読売新聞が20日~22日に実施した世論調査でさえ、安倍内閣の支持率は続落して39%となり、非支持率は53%で第2次安倍内閣発足以来、最高値を示した。加えて「麻生財務相は辞任すべき」が50%、「安倍首相の責任は大きい」が74%だ。
 安倍内閣は、いま急速に下落する内閣支持率と高騰する内閣不支持率の前に、政権の危機に直面している。

 安倍晋三政権は、日本会議など極右・改憲派のエースだ。
 改憲派にとって、この切り札である安倍政権のもとでの改憲策動に失敗することは絶対に許されない。
 もし倒れたら、この国でしばらくの間は、改憲策動は不可能になる。
 改憲派はいま、倒れそうな安倍政権を支えるために必死の策動をしている。

 4月20日、桜井よしこの大きな写真を配置した「国会よ、正気を取り戻せ」と題した「国家基本問題研究所」(理事長・桜井よしこ、副理事長・田久保忠衛)の意見広告が、産経、日経、読売の各紙に掲載された。
 これは、安倍政権の危機に直面した桜井らのうろたえぶりを如実に示したものだ。
 意見広告は、「憲法論議、北朝鮮問題、戦略的思考を要する日中関係、経済摩擦も加わり複雑さを増す日米関係など、国家的課題が置き去りにされている」として、「一体いつまで続けるつもりなのか。多くの野党、メディアはモリカケや自衛隊日報の『疑惑』追及に明け暮れ、事の軽重を完全に見失っている」と断じ、野党は「論点がずれた(安倍首相の)『疑惑』を持ち出し続けている」と、安倍首相の責任が問われていることに怒りを表明している。
 そして、その野党の安倍首相批判の目的は、「安倍首相の掲げる憲法改正阻止にあるのではないか」と断じている。
 そのうえ、「わが国がいま外交、安全保障で身動きが取れなくなっているのは、現実に対応できなくなった憲法を正そうとせず、常識から外れた論議に終始する政治の無責任さに原因がある」と結論づける。

 しかし、安倍政権は「日米機軸」を高く持ち上げて、トランプ大統領と100%一致していると言いつのったにもかかわらず、朝鮮半島の危機の打開の動きでは全く孤立して蚊帳の外におかれ、米国からさんざん高価な武器をかわされたうえ、経済摩擦で米国の貿易赤字のつけをまわされてしまった。
 これは硬直した右派路線をとる安倍政権自らが招いた外交の失敗で、まさに国家的危機だ。
 野党や、国会や、憲法のせいにするのはお門違いも甚だしい。

【自衛官の現職幹部による小西議員罵倒のもつ意味】
 4月17日の参議院外交防衛委員会で、民進党の小西洋之参院議員が驚くべき事件を明らかにした。
 小西議員は16日午後9時ごろ、国会前の路上で、ジョギング中の現職自衛官と名乗る男性から「お前は国民の敵だ」と暴言を浴びせられた。
 男性は、近くにいた警察官らが駆け付けた後も同様の発言を執拗に繰り返し、30分にわたり、ののしり続け、暴言の重大性を指摘されると最終的には謝罪したという。

 彼は「小西か、俺は自衛官なんだよ」「おまえ、ちゃんと仕事しろよ」「お前は国民の敵なんだよ」「お前、気持ち悪いんだよ」「国会議員に意見して何が悪い」などとからんできたという。
 小西議員は、自衛隊法に反する可能性を指摘して発言の撤回を求めたが、撤回が拒否されたため、その場から豊田硬防衛事務次官に電話をして事件を伝え、近くで警備中の警察官を呼び寄せた。
 加勢の警察官も駆け付け、所轄の麹町署の警備課長も到着すると、この自衛官はようやく、態度を変え、発言を撤回したという。

 この自衛官の行動は、わが国最大の実力組織の「自衛隊員の政治的行為を制限した」自衛隊法に違反するものであり、許されざる行為だ。
 防衛省は、この人物が統合幕僚監部に勤務する30代の幹部自衛官(3等空佐)と確認し、河野克俊統合幕僚長は小西議員に直接謝罪した。
 小野寺五典防衛相は、同委員会で、この件についてすでに報告を受けているとし、「自衛隊の服務の問題になる。事実関係を確認した上で適正に対応する」と述べた。

 しかし小野寺防衛相は同日、記者団に対して、「若い隊員がおり、様々な思いもあり彼も国民の一人でありますので当然思うことはあると思う」などと述べ、19日の参院外交防衛委員会では「擁護するというつもりはない」と答弁する一方、「自衛官にも憲法で保障された内心の自由は認められる」などと発言し、問題の重大性を全く認識していないことを露呈した。

 筆者は19日夜、国会議員会館前で開催された総がかり行動実行委員会などが主催した「安倍9条改憲NO! 森友・加計疑惑徹底追及! 安倍内閣退陣! 4・19国会議員会館前行動」でのあいさつでこの事件に触れ、「このところの自衛隊の暴走は目に余る。これは安倍首相の9条改憲、自衛隊の根拠規定明記の動きと軌を一にしたものだ」と指摘した。
 おりしも、自衛隊のイラク戦争と南スーダン派遣の際の「日報」隠しが問題となり、情報の公開原則と、民主主義の根幹にかかわるシビリアン・コントロールからの逸脱が指摘されている時だ。

 国会では「廃棄した」とされていた南スーダンPKOの日報が見つかり、隠ぺいはPKO参加5原則に抵触する「戦闘」との記述を隠すためだと指摘されていた。
また防衛省は従来、「ない」としてきた陸上自衛隊イラク派兵部隊の日報を公表した。明らかにされた日報によれば、自衛隊のイラク派兵は「非戦闘地域」での活動が建前だったが、派遣された自衛隊員が「殺し、殺される」危険にさらされていた「戦闘地域」だったことが明らかにされている。
 しかし、サマワの陸自宿営地とその周辺への迫撃砲などによる攻撃が多発した2004年4月~2005年1月の日報は隠ぺいされ、わずか2日分しかない。
 ここにいたっても「サマワなどは戦闘地域だった」という決定的な証拠を隠そうとしているのだ。

 こうした自衛隊、防衛省の暴走の背景は、安倍政権のもとで海外での戦争を許容する「戦争法」などの法体系が着々と、調えられ、また、その実力を強化するための防衛予算が年々増大されるなど、自衛隊の社会的地位の変化にある。

 2017年5月3日に安倍首相が発表した9条改憲案に対して、河野克俊自衛隊統合幕僚長が「一自衛官として申し上げるならば、自衛隊の根拠規定が憲法に明記されるということであれば、非常にありがたいと思う」と述べたことがある。
 河野統合幕僚長が「一自衛官としてした話」との前提を付けたとはいえ、この発言は自衛隊員の政治的行為を制限すると規定した自衛隊法61条に違反したとんでもない発言だ。
 先の小西議員に対する自衛官の暴言同様、こうした行為が容認される空気が自衛隊の中にある。

【5・15事件で叫ばれたスローガンの復活】
 歴史を振り返ると、この自衛官の「国民の敵」呼ばわりには既視感がある。
 1932年の5月15日、海軍青年将校らが首相官邸を襲撃し、犬養毅首相を暗殺した「5・15事件」の際の檄文の文言には「日本国民よ!国民の敵たる既成政党と財閥を殺せ!祖国日本を守れ」とあった。
 有名な話だが、その時、犬養は「話せば分かる」と制止したが、将校らは「問答無用」と銃撃した。
 犬養内閣の崩壊後、日本は軍部独裁の体制の下、中国大陸に対する侵略戦争に突入した。

 小西議員を罵倒した自衛官の脳裏にはこの「国民の敵」のスローガンがあったに相違ない。
 いや、それどころか、自衛隊の若手幹部の中で、こうした過去の歴史を研究し、「5・15事件」の首謀者らにシンパシーを寄せる空気が醸成されているのではないか。そして、こ小西議員らの発言を研究し、共通して指弾する空気があるのではないか。
 これはただ事ではない。
 5・15事件に先立つ1930年9月下旬、陸軍革新派ら若手の佐官、尉官を中心にしたクーデター準備組織・秘密結社「桜会」が作られ、繰り返しクーデターを企て、1931年9月18日の柳条湖事件をきっかけとした「満州事変」、15年戦争への突入に重要な歴史的役割を果たしたことがある。
 この自衛官の行動を見ると、すでに自衛隊の中で「桜会」が復活しているのではないかと疑わせる。
 この動きは「国民」を敵と味方に分断し、敵を「非国民」と指弾するものであり、特別職の国家公務員としての、全体の奉仕者の立場とは全く対立するものだ。

 4月22日の東京新聞「本音のコラム」で法政大学の山口二郎教授はこう指摘した。
 「(自衛隊は戦前の反省から出発した)吉田茂は『自衛隊が国民から歓迎され、ちやほやされる事態とは、国家存亡の危機の時か、災害派遣の時とか、国民が困窮している時だけなのだ。言葉を変えれば、君たちが日陰者であるときの方が、国民や日本は幸せなのだ』と言い切った。自衛隊を日陰者にするつもりはないが、自衛隊の本質を言い当てている」と。

 筆者の子どもの時分は、自衛隊員が休暇でも制服で外出することをためらう雰囲気があった。まさに日陰者扱いだ。
 いまはそうではない、世論調査でも自衛隊への理解と支持は圧倒的割合を占める。
 それが安倍政権のような憲法無視・敵視の政権のもとで、自衛隊の政治への関与を正当化させ、批判勢力に対する敵視につながっているとしたら、極めて危険なことだ。

 「クーデターの危険などあり得ない」と考える市民が多いと思うが、今回の小西議員へのこの自衛官の言動をみれば、それはあながち杞憂ではないことを知らされよう。
 この危険な動きを芽の内に摘むことができるかどうか、それは今回の事件のようなことをけしてうやむやにしないで、問題を抉り出し、決着をつけることができるかにかかっている。

 不戦・非武装の憲法第9条の下で、国会の多数を傘に着て、恣意的に解釈に解釈を重ね、日米安保体制を正当化し、自衛隊を組織し、強化して、世界有数の暴力装置にまで育てあげた戦後の政治過程の矛盾は、いずれ憲法第9条に沿って変革されなければならない。
 まっとうに考えるなら、自衛隊の存在が憲法違反であるのは論を待たない。
 この自衛隊のある限り、軍事力による政治への介入の危険はなくならない。

 おりしも安倍首相によって、憲法第9条の破壊が企てられている時だ。
 私たちはもう一度、憲法第9条の価値を再確認しなくてはならない。

 この国を戦争への道を走らせないためにも、今回の事件をあいまいにすることはできない。腐敗した権力は倒さなければ倒れない。

 小野寺防衛相と河野議長の引責辞任、および首相の任命責任を明らかにしなくてはならない。

 このように暴走する体質をもった自衛隊の根拠規定を日本国憲法第9条に付け加えるのは、平和憲法の破壊であり、許されない。
                         (「私と憲法」4月25日号所収 高田健)

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