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2020年東京オリンピック(平和の祭典元年宣言)

寄稿:西村 修一(馬術家・エッセイスト)

2017年7月12日

(一)世界情勢と日本の現状

 今や世界各地で紛争が激化し、テロの脅威にさらされ、また宗教への考え方や主義主張の違いから、罪もない人々が毎日のように無差別に命を奪われている。
 三百万人を超す戦争犠牲者を出した二〇世紀の二度にわたる大戦に打ちのめされ、安定と共存を求めたはずの国際社会で再び国家のエゴが強まりつつある。
 米国のトランプ現象や英国の欧州連合離脱の背後には、排他的な「自国第一主義」が見て取れる。また、中東和平の道は険しく、北朝鮮や南シナ海における中国の行動、常に漁夫の利を狙わんとするロシア等々、国際安全保障理事会による国際平和の理想は揺らいでいる。まさに現在の世界情勢は一触即発の感がある。平和のために戦うという名目からは決して平和は訪れない。「願望」という言葉がある。私たちが生きるということは、一つの願いをもって生きるということであり、その願いは人と人が殺し合うようなことだけは止めようという願いである。
 文明は電灯のつくことでも、原子爆弾を製造することではない。文明とは人を殺さぬことであり、戦争をしないということであり、相互に親しむことであり、相互に敬うことである。
 「平和」を御本尊とする世界唯一の宗教団体として誕生したはずのIOCは金儲け主義に徹し、全く役に立たない。しかし、この世界情勢をふまえてIOCは「平和の祭典」を主催することによって世界の平和に少しでも貢献すべくあらゆる方策を考えるべきである(IOCについては後に詳しく述べる)。
 1094兆円もの借金王国日本は、今や消費税を先送りしなければならぬほど経済は疲弊し、さらに少子高齢化社会に向けて保険、教育、福祉、介護、貧困格差等、様々な難問が山積みしている。このような情勢の下、利権の亡者たちによって建設される総合競技場や選手村を始め各種競技施設等は、その大半が負の遺産となることは疑問の余地がない。
 現にリオのオリンピック諸施設のほとんどが負の遺産となっており、冬期オリンピックはウインタースポーツの本場、スイス、ドイツ、スウェーデン、ポーランド、ノルウェー等総て開催を辞退し、2024年のハンガリー、ボストンも立候補を取り下げている。もはやどこの国の都市もやりたがらないオリンピックは、感動を与え、莫大な富を失う世界的イベントとなってしまった。
 東京オリンピック開催のための莫大な経費は大会でもたらされる些細な収入では埋め合わせは不可能である。その上、今後の施設建築費用は資材の高騰、人手不足、期限付き工事等を口実に業者の言い値のまま、しかも不渡りの心配なしとあっては、ゼネコンや広告代理店、一部政治家たちの思う壺。今後どのくらい建設費用が増加するか想像もつかない。
 日銀レポート五輪の経済効果30兆円は、よく読むと希望的観測であって、「取らぬ狸の皮算用」もいいところ。過去のオリンピックの経済効果は、どの国も大きく期待外れ。これらは利害関係企業のプロモーション(営業促進)向けに粉飾したものばかり。
 前回の東京オリンピック開催のインフラ建設の財源として日本は世界銀行からの借入金返済に30年を要した苦い経験がある。今回は都知事一人が孤軍奮闘しているが、外の政治家たちは御身大事に、しかも自分の懐が痛まないことをいいことに、全く無責任にわずか17日間のスポーツイベントのために何兆円もの資金を投入しようとおかまいなし。大会終了後、諸施設が負の遺産となろうが自分たちは無関係。
 最優先すべきは、東日本大震災や熊本地震の復興支援や地方創生である。問題点を上げると、
1、福島の惨状はアンダーコントロール等とんでもない。震災6年を経てもまだ復興はままなら
  ない。
2、全く先の見えない豊洲・築地問題。
3、首都圏直下型地震M7以上が30年以内に発生する確率70%(4年以内15~30%)
4、北朝鮮・韓国・中国・ロシア等に対する防衛対策費。
5、テロや内戦による難民流入による欧米社会の分裂問題等、地球規模の国際秩序無視の漂流が
  始まった場合の対策。
6、テロリストに対する日本の対策。日本はテロリストに対する免疫力零。
7、国際組織犯罪防止法は国連加盟187ヶ国の大半に備わっているが、日本は無防備。そのため
  他国の処罰を逃れて入国する外国人流入の可能性が大。
8、最近ますます高度化するサイバー攻撃対策に要する莫大な費用。
9、オリンピックのテレビ等の収入をIOCと組織委員会にどのように分配されるかが未定。おそ
  らく大半はIOCの懐に入ると思われる(IOC改革参照)。
10、1945年以降、千人以上の死者、行方不明者が出た大災害が12回起きている。最近では御嶽
 山、口之永良部島、箱根、霧島連山と大山の噴火が続き、富士山が噴火したら東京の交通は
  完全に麻痺する。

 以上のことをふまえて次に東京オリンピックをどう企画実行するか。

 
(二)東京オリンピック
  (平和のための祭典復活宣言)

 去年8月15日、終戦記念日はリオ五輪の真っ最中だった。終戦記念日の式典で安倍首相は、「尊い犠牲の上に私たちが享受する平和と繁栄があることを片時も忘れない。戦争の惨禍を決して繰り返さない。この誓いを貫き歴史と謙虚に向き合って世界の平和と繁栄に貢献する」と述べている。
 その日本が開催するオリンピック。最大の難問は開催期間が7月24日~8月9日、盛夏である。つい最近アメリカは地球温暖化対策(パリ協定)より離脱し、温暖化に拍車がかかると思われる。前回の東京オリンピックは平均15.9度、今回はおそらく35度以上、40度近くなるはずだ。これではアスリートファストではなく、アスリートラストエンドである。
 それに対して新国立競技場をはじめ大半の競技施設は冷房設備無し。マラソンコースのアスファルトに細工をしようが、霜(ミスト)を吹こうが、競技を夕方から実施しようが、暑さや湿気に弱い選手は命あっての物種だ。国際馬術連盟の「馬のスポーツ憲章」には、「馬のウェルフェアあるいは安全が確保できない気象条件においては競技は実施してはならない」と明記されている。湿度85%等という気候は湿度に弱い馬、殊に欧米から来る馬にとっては殺人ならぬ殺馬的だ。
 各競技場に救護施設を設けるというが、人馬の死体安置場が必要だ。したがって、オリンピック開催に先立ち、以下のことを各国に正しく通達する義務がある。
①出場選手はそれを承知で出場し、万一事故が発生した場合は一切裁判沙汰にせぬことを予め
 契約条項で明記すること(総て自己責任)。
②全世界に向けてオリンピック期間中、地球上のあらゆる争いを中止するよう命令する。それ
 に違反した国の選手は直ちに拘束、禁固刑に処することとする。
③表彰式は廃止。当然、金、銀、銅のメダルはなく、国旗の掲揚、国歌の斉唱も無し(1963年西
 独のIOCの総会で提案されたが否決)。
④選手の演技はすべてエキジビジョンとする。
⑤ドーピング(筋肉増強剤・鎮静剤・興奮剤)、血液ドーピング、用具ドーピング、遺伝子ドーピ
 ング、すべてOK。ただし、すべて自己責任。選手たちは観客に失敗を恐れず、伸び伸びと最
 高の演技を披露のこと(選手は順位がつかねばドーピングは行わないで、国もドーピングを選
 手に強要はしないはず)。
⑥絵画、彫刻、音楽、文学、建築の5種目は1912年~1948年の10回のオリンピックの実績を参
 考に最小限で実施。会場は新設しない。
⑦最高のスポーツ演技は一級の芸術。その芸術に対して未熟な審査員が採点をするのは選手に
 対する冒涜行為。
⑧すべての種目に対してプロ、アマ関係なし。
⑨形式的で無意味な聖火リレー廃止。
⑩開会式は盛大に世界の平和をアピールすること。
 古代オリンピックでは開催を告げる使者を「スポンドフォロイ」(休戦を運ぶ人)と呼んだ。クーベルタンはオリンピック選手を真のスポンドフォロイ(平和を運ぶ人)(平和の使者)とするはずだった。そこで初めてオリンピックは参加することに真の意義を見いだそうとしたのだ。
 聖火リレーも同じく1936年ベルリンオリンピックの祭、ギリシャのオリンピアで採火した聖火を世界の平和を願う沿道のすべての人々の祝福を受けてベルリンまで運んだのだ。その聖火ランナーも同じくスポンドフォロイだった。オリンピックの五輪の輪、青オセアニア、黄アジア、黒アフリカ、緑ヨーロッパ、赤アメリカ、この五大陸の祝福を受けて聖火リレーがギリシャから開催地の総合競技場に一筆書きで到着するところに聖火の意義があるのだ。
⑪閉会式は開催国の宣伝は一切廃止。世界中の惨憺たる有り様、内戦や難民の惨状の映像を
 大々的に放映。
 それで初めて今回のエンブレム(お通夜か告別式の高張の堤燈の紋章)のイメージと合致する。そして、無意味に死んでいった人々の冥福を祈ろう。
 長野オリンピックの開会式の当日、忘れもしない司会の萩原欽一は「刻々と遠ざかってゆく地球を眺めながら、宇宙で飛行士たちはお互いにあれが我々の住むアメリカだ、日本だと言っていたが、最後に、あれが我々の住む地球だ! そうだ地球は一つなんだと言ったあの言葉を胸に抱いてオリンピックを成功させよう」と言った。
 戦争の悲惨さを知っている人は少なくなった。私の家の障子紙を細く切って十文字に貼ったガラス窓は爆風ですべて吹き飛ばされ、家の前の空き地には13人の遺体が運び込まれた。その光景は今でも目に焼き付いている。
 〝二度とない人生だから戦争のない世の実現に努力し、そういう詩を一編でも多く作ってゆこう。私が死んだら後をついでくれる若い人たちのためにこの大願をかきつづけてゆこう〟(坂村真民 二度とない人生だから)

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